フィレンツェは”天井の無い美術館”と言われる通り、美術作品の宝庫です。世界的に有名なウフィッツィ美術館やアカデミア美術館はもちろんのこと、町のいたる所にルネッサンス時代の痕跡が残っており、美術が好きな方にとっては歩いているだけで様々な発見があります。また、特別に西洋美術に造詣がない方でもこの町の美しさに魅せられ、旅行の間に楽しみながら知識を身に付けたい、と思う方もいることでしょう。

フィレンツェの語学学校には美術史コースがあるところが多いですが、イタリアンミーの”美術史を通して学ぶイタリア語コース”には他にはない特長があります。それは何かというと、イタリア語の語学としての勉強テーマが美術史だ、ということです。

言語を勉強する時、色々な単語を覚えなければなりません。でもたくさんの単語を覚えるのは大変ですよね。同じ大変な思いをするなら、興味がある分野に絞って覚えたいと思いませんか?

”西洋美術”といえば立派な学問ですから難しそうに聞こえますが、ここフィレンツェにはそれが日常にあります。〇〇さんがXXXをした、という文章に使う言葉を美術史の単語で勉強してみよう、というのがこのコースの試みなのです。

ですから、イタリア語レベルは全くの初心者であっても構いません。美術史の知識がなくても大丈夫。必要なのは美術が好きだということと、関連知識への好奇心だけです。

このコースは他のどこにもないものなので、「どういうコースか分からない」という方も多いと思います。このブログでは、実際にこのコースを受けた日本人の参加者Mさんのコース日記を基にして、Mさんから協力頂いた写真とともにコースの紹介をしたいと思います。

Sara 先生のコース日記 

1日目: 

今日は”美術史を通して学ぶイタリア語コース”の初日。学生はMさんという日本人の方で、とても親切で感じがよく、いまはご主人と休暇でイタリアにいる。Mさんはイタリア美術とイタリア語が好きでこのコースにとても期待しているようだ。初日の今日は教室でお互いのことを話して自己紹介をしながら美術についてとても楽しく話しをすることができ、あっという間に時間が過ぎた。私からは2週間のプログラムの説明とそれに必要な単語などを説明し、最後に明日の見学地のサン・ロレンツォ教会とラウレンツィアーナ図書館での待ち合わせを約束して終了。

2日目:

教室で9時半に待ち合わせをし、今日の見学について少し話し合う。Mさんは私に、昨日買ったというイタリア美術の本を見せてくれた。サン・ロレンツォ教会の見学には結構な時間を割いたが、Mさんはとても嬉しそう。私の説明をじっくりと聞いて、教室で勉強した言葉を使ってコメントする。彼女の好きなブルネッレスキやドナテッロの作品について話し合う。長い教会の見学の後、ラウレンツィアーナ図書館を見学する。Mさんは実物を見るのは初めてということで、とても感動していたが、やはりミケランジェロ作の玄関と大階段は絶句する美しさである。

3日目: 

昨日の濃厚な見学の後なので、今日は教室で授業をする予定にしていた。でも、マニエリズモについて話していたらどうしてもサンタフェリチタ教会のカッポーニ礼拝堂を見るべきだと思いついて、それを提案する。学校から徒歩で数分の場所だし、Mさんも提案にとても喜んでくれたので、教室での要点整理を終えて早速出かける。暗い教会の入り口すぐにあるポントルモの作品を見るため、コインを入れて照明をつけると・・名作が現れた。マニエリズモの代表作と言われるこの作品( Deposizione )を初めて見た彼女はそれを丁寧に鑑賞して、私に鋭いコメントをする。教室で勉強したことをよく理解した上でのコメントである。サンタフェリチタ教会はフィレンツェの中でも特に重要な教会というわけではなく、観光客も少なめだ。私たちがいる間も入ってくる観光客はいたがみんなさっとあたりを見渡して写真を撮り、去っていく。こんなに素晴らしいポントルモの作品には気がつかず、(仕方がない、照明もないし有名な作品だという案内もないのだから・・・)このすぐ先にあるもっと有名な観光地であるPitti宮殿の方へと流れていく。この教会でのポントルモの待遇は決してよくないと言えるだろう。

4日目:

今日もまた濃厚な1日だ。昨日見学したことのまとめと今日の説明をした後、すぐに見学先の教会へ向かう。フィレンツェで最も美しい教会の一つ、サンタマリアノベッラ教会である。学校から徒歩数分ではあるが、早めに教室を出て見学に時間をたっぷり使う。まず始めに教会前の広場に立ち、レオン バッティスタ アルベルティ作のファサードを鑑賞する。その後、幸運にもあまり混んでいなかったのですぐに教会に入って、まずは建築的な説明をする。Mさんは鋭い観察眼を持って、今までに習得した語彙をうまく使って作品のコメントをしている。次に絵画を鑑賞する。マサッチョ、ジオット、ギルランダイオ、フィリッポリッピ、ブルネッレスキ、オルカンニャ・・・・見学のテーマがたくさん!教会見学の後は、大回廊、死者の回廊、そしてパオロ・ウッチェッロのフレスコ画が見られる緑の回廊へ向かう。そこからアンドレア ボナイウートによるフレスコ画で一面に装飾されたスペイン人礼拝堂を見学する。回廊に戻り、そこへMさんのご主人も到着し、昼食の時間となったのでここでお別れする。明日はとってもスペシャルな見学が待っている・・・・

5日目:

いつもの通り、前日のまとめと今日の見学のイントロを教室で行う。今日の見学地はとても素敵なところだが観光客にはあまり知られていない場所、ブランカチ礼拝堂である。礼拝堂はフィレンツェの”川向こう地区”、サンフレディアーのにあるカルミネ教会の右翼にある。礼拝堂は教会とは別の入り口があり、小さいため一回に30人しか入れない。そのため予約は絶対に必要である。予約より少し早く着いたので回廊と、アレッサンドロ アッローニ作の最後の晩餐のフレスコ画で彩られた食堂も見学してから、礼拝堂に入る。Mさんは初めてここに来たということで、マゾリーノ、マサッチョ、フィリッポ リッピの素晴らしいフレスコ画に完全に魅了されていた。予約時間が終わり看守に出て行くように促されるまで私たちは絵画の色、シーンについて語りあう。小さい礼拝堂ながらあまりにも多くの見学ポイントがあり時間はいくらっても足りないくらいだ。礼拝堂を出た後、カルミネ教会に入り教会が閉まるまでコルシーニ礼拝堂を見学する。

ここではフィレンツェのバロックについて話す。そうこうするうちに時間となり、私たちの1週目は終わりとなった。また来週の月曜日の待ち合わせをして解散。

 

2週目の日記は次回のブログに続きます・・・